英語学習ブログ発音

『発音を極める「英音法」100のルール』を読んで

音声を聞きながら二周読んだ時点の感想です。リズムとイントネーションを、ほかの本ではなかなか見ない詳しさで、言い切りすぎずに整理している本だと思っています

最近、『発音を極める「英音法」100のルール:リズムとイントネーション徹底トレーニング』(サラ著、ベレ出版)を読みました。音声も聞きながら、二周読み終えたところです。

英語の学習書は、数多くあります。そのなかでも、この本は、多くの人が読んで価値を感じられて、得られるものがある本だと思います。ほかに替えが効きにくい、素晴らしい本です。なぜそう思うのかは、このあと書いていきます。

正しさや伝え方についての感想は、後半にまとめています。

まず、良いと思う点

良いと思う点を、先にまとめておきます。

  • ほかの書籍では詳しく扱われにくい、リズムとイントネーションについて、ここまで丁寧にまとめられたものはほかになさそう
  • 正しい内容を、レイアウトも言葉づかいもわかりやすく、多くの人が読みやすい形に整理している
  • 音声もポイントが強調されていてわかりやすい
  • 過度に断定せず、過去の知見を引用して情報を提供してくれている
  • 知識の深い著者が、さまざまな書籍を参照し、具体例や引用もしながら伝えていて、さらに詳しく知りたいときの行き先までフォローしている
  • 先に習ってから慣れることが重要である、と最初のほうでしっかり書かれている
  • 強勢を、ありなしの二段階ではなく、三段階で見ていて、音の高さと長さにも触れている
  • ルールに頼れるのはどれくらいの割合で、どれくらいにはブレがあるのか、学習者としてどう学ぶとよいかまで書いてある

こうしたところから、本当に良い本だと思っています。

リズムとイントネーションに特化した本は珍しい

リズムやイントネーションを本格的に学んだ人は少ないのではないでしょうか。

発音の本では、個々の子音や母音は丁寧に扱われます。ここ10年くらいでは、連結や弱化、脱落といった音声変化が、SNSでも書籍でもかなり情報が出回るようになったと思います。個々の音、音のつながり、機能語は弱く読んで内容語は強く読みましょう、といった説明や、基本的なイントネーションの話なら、どこかで聞いたことがある人は増えていると思います。

ただ、イントネーションは、発音の本の一部の章で少し扱われるくらいのことが多いように感じます。発音を身につけようとしても、母音や子音、あるいは音声変化に意識が向きやすくて、イントネーションやリズムに集中してしっかり練習する人は、本当に少ないんじゃないかと感じています。

例えば、竹林滋氏の『初級英語音声学』でも、索引を含めた約150ページのうち、アクセント・リズム・イントネーションを扱っているのは31ページです。

そのようにメインでフォーカスされにくい部分に特化して、詳しく書かれた本が出ただけでも素晴らしいことだと思います。中身も本当に良かったので、これから書いていきます。

知ってから慣れることが大事

発音も、リズムも、イントネーションも、身につけにくいものです。知識として文字で理解しただけでは、身についたことにはなりません。スキルとして身につけることが大事です。

英文法も似ています。ルールだけを覚えると、そのルールに頼ってぎこちなく組み立ててしまい、時間もかかって、なかなか流暢になりません。子どもの場合、その言語を母語として普通に育ち、教育も受けていくような状況なら、言語に関する様々なスキルは自然に身についていきます。大人になってから勉強するのとは、だいぶ違います。脳の可塑性も違いますし、まわりの環境も、触れる量も違います。学び方も、実際にその言葉で生活するのに比べると、偏りやすくなります。注意をどこへ向けるか、指導してくれる人がいるか、気づきが起きるか、どれくらい使うか、感情が伴うか、すでに母語で身につけた癖があるか。関わるものは一つではありません。

音のルール、リズム、イントネーションも同じです。ルールを知らなければ、特に大人になってから自然に吸収するのはとても難しい。ルールを理解していてもスキルが身についているわけではない。なので、ルールを理解し、実際の自然な英語で慣れていくことになります。大人からの外国語学習では、先に理解してから慣れるほうが、学習効率が高いと言われます。

本書の16ページにも『正しいリズム・イントネーションは「習うより慣れろ」ではなく「習ってから慣れろ」』と記載されています。特に大人からの学習者、あるいは中学生や高校生でも、そこまで大量に英語を聞きまくる環境でない場合は、基本的な知識は得たうえで大量の英語に触れる。その中で「なんでここは強く読まれているんだろう」「なんでこのイントネーションなんだろう」と意識をする。そういう学び方が大事だと思います。

そのような大事なポイントがしっかり書かれているのも、素晴らしいと思います。

この本を読んで変わったこと

私自身、本書を読み始めてから、英語を聞くときにイントネーションへ意識が向くようになりました。今まで気づいていなかったイントネーションやアクセントに気づくことが増えています。自分で言うときにも、知識を活かせる部分が出てきました。

新しい知識を得たばかりなので、まだ全然使える段階ではありませんが、学んだことが自然にできるようになったら、大きな違いになりそうです。今の時点では、英語を聞く時に「確かにそうだな」「ここではこう読んでいるんだな」「ここが強調されているんだな」「ここは複合語だから、ここに強勢が置かれているんだな」と感じながら楽しんでいます。

英語をたくさんインプットすることは、英語学習の基本として大事だと思います。ただ、気づきがなければ成長につながらないということも多いように思います。長く海外に住んでいても発音が変わらない、興味のないところや、気づいていないところはわからないまま、ということはよくあります。知識が先にあると、改善する方向が見えてきます。気づきは学習にとってとても大事だと感じます。

情報が正確かつ読みやすい

著者のサラさんについては、YouTubeやXの発信を以前にも見たことがあり、専門書などのレベルの高い内容を伝えてくれている方だと思っていたので、本が出ると聞いて期待していました。本を読んでの感想としては、完全に期待以上でした!

参考文献や推薦書籍もたくさんあり、専門的な内容がきれいに整理されています。文字は大きめで、レイアウトも見やすく、説明も読みやすいです。かなり多くの人が、抵抗なく読み進められる形だと思います。

言葉づかいも、正しい用語を使いながら、わかりやすく伝えようとしています。音の話は、きれいに分類しきれない部分や、解釈が複数ある部分があります。そういうところも、どの専門書ではどう扱われていて、この本ではこのように扱う、と説明されているので、間違ったな解釈に引っ張られにくいです。

様々な人の一般向けの説明やSNSでの発信では、わかりやすくするために説明がずれたり、誤解を生む表現になったりすることがあります。この本は、正しい情報をもとに噛み砕いて、見やすくしながら、情報の質を極力保っていると感じます。

一般書なので、とても細かい部分には踏み込まないところもあります。そのときは、何を参照すればいいのか、より深い内容はどの本を見ればいいのかまで書いてあります。辞書で表記が違うときは、どの辞書ではどう書かれていて、ほかの単語を調べるならどこを見るとよいか、というところまでフォローされています。

リズムやイントネーションの本で、ここまで丁寧に、わかりやすく、この情報量でしっかり書かれているものは、他にはないと思います。それだけでも、とても価値があります。

100のルールとして整理されている

音のルールについて、多少は知っている、という人もいるんじゃないでしょうか。疑問文なら最後が高くなる、断定するときは下がる、複合名詞なら前のほうが強く読まれる、機能語は弱く読まれる。そういう知識なら、持っている人はいると思います。

ただし、この100という数のルールを、体系的にきれいに整理して示している本は、一般書としてはほかにはないんじゃないかと思っています。収録音声も、強く読まれるところがしっかり強調されるので、どこに強勢があるのかがわかりやすいです。

アクセントについても、機能語か内容語か、伝えたい部分を強調、といった二段階の説明はよく見ます。この本は、第二アクセントが大事だということに触れつつ、第一アクセント、第二アクセント、弱勢の三つのレベルで見るので、解像度が上がります。より詳しい内容は、ぜひ書籍を見てみて下さい。

除アクセント、格上げ、アクセントの移動、複合語ではどこにアクセントが来るか、どういう場合はそこまで定まっていないか、などに関しては、詳しい人は少ないのではないでしょうか。少なくとも私は、一部を聞いたことがある程度で、詳しく理解したり、意識したりはしていませんでした。

どこにアクセントが来るかは、断片的に教わることはあります。ただ、言われた通りにやると「この場合は違うぞ?」となることも多く、結局どこをどう読んだらいいのか、自信が持てないことがあります。この本くらい整理されていると「これはこうなっているから、たぶんこうだろう」「ここはどっちでもいいやつだな」と選びやすくなります。

たとえば white house を「白い家」として読むなら、強勢は house にあります。大統領のいる場所としての White House なら、強勢は White にあります。この対比は本にも載っていて、一般的にも知っている人が多い例だと思います。ただ、複合名詞だから前に強勢、で終わる話ではありません。前に強勢が置かれる場合と、後ろに強勢が置かれる場合があって、それぞれにどんなルールがあるかが書かれています。ルール34では、前に強勢が置かれる読み方が七つに整理されています。ルール35では、後ろに強勢が置かれる読み方が五つにまとめられています。

イントネーションやアクセントは、人の感覚による部分も大きいので、同じ文章なら必ず同じように読まれる、というものではありません。201ページあたりには、英文のどこに強勢が置かれるかはある程度予想できて、具体的には八割程度は予想ができそうだ、という説明があります。すべてが当てはまる、という書き方でもありません。どのくらい予測できるのかが、白か黒かではなく書かれているので、誤解や変な思い込みにつながらないところも素晴らしいと思います。

8つのイントネーション知っていますか?

下降調と上昇調がある、ということ自体は、発音の本でもよく見ます。それ以外は、そこまで詳しく書いていないことが多いように感じています。

この本では、まず大きく四つの調に分けています。下がる下降調、上がる上昇調、下がってから上がる下降上昇調、そして高さがあまり変わらない平坦調です。それぞれがどう使われやすいか、どれくらいの割合で出るか、どういう文のときにどの調になりやすいかも書いてあります。その一方で、揺れもある、という説明もされています。学習者としてはどう学ぶとよいか、という視点や、学習者としてオススメの取り組み方も書かれていて、とてもありがたかったです。

核になる部分の調とは別に、その後ろのピッチの動きについても説明があります。核の後ろに音節や語が続く部分は、尾(テイル)と呼ばれていて、そこがどうなるのかも書かれています。そのような部分もほとんど発音の本で見たことがなく、良い学びになりました。

基本の四つの調も含めて、最終的には8種類のトーンを学べるようになっています。そのなかには、上がってから下がる上昇下降調や、部分下降調もあります。イントネーションについて、ここまで分けて説明しているものは、ほかになかなかないと思います。

幅広い人に勧められる本

私は、特定の本や、特定の人を、「これがオススメだ!」と強く言いたいタイプではありません。本にも人にも、それぞれ良い部分はあります。その代わり、どこかは雑になっていたり、全部は説明できないので何かが切り捨てられていたり、分かりやすい代わりに粗くなっていたりということもよくあります。

文法や発音の本は、色々な人が出しています。多少個性があっても、多くのものは出版されるだけの質は担保されているのだと思います。なので、自分のレベルや好みに合わせて選べばいいと思っています。

けれど、この本の場合は少し状況が異なります。リズムとイントネーションに特化した本が少ないなかで出版され、幅広い内容が体系的にまとめられていて情報の質も高く、レイアウトも見やすく理解しやすい説明になっていて、さらに学びたい人がどの書籍にあたるべきかも記載されている、といった理由から、幅広い人に勧められると思います。

発音にあまり興味のない人もいて、それはそれぞれの感覚だと思います。ただ、発音に興味がある人、相手の話している内容や気持ちをより知りたい人、自分の言葉をより適切に伝えたい人にとって音はとても大事な要素だと思います。その中で、音の大事な要素であるリズム・イントネーションに関する本で今オススメを聞かれたら私はこの本を選びます。

※学習書や専門書など、幅広く網羅できているわけではないので、あくまで知っている範囲ではあります

この本から、より上手く学ぶために

リズムとイントネーションの本として、本当に素晴らしいので、多くの人に手に取ってもらいたいです。この本を活かすためには、本にも記載されているように、慣れることが前提です。実際の英語をたくさん聞いて、それに慣れていくことが最重要です。

本書の前に(もしくは並行して)、基本的な発音記号については学んでおくと読み進めやすいと思います。発音記号を用いた説明が時々出てくるので、そこは分かっていたほうがいいと思います。ただし、発音記号が大量に出てくるわけでもなく、メインのテーマはリズムとイントネーションで、視覚的にわかりやすく表記してくれているので構える必要はないと感じます。

また、音節(シラブル)が何なのかも、先に分かっていたほうが良いかなと思います。音節は音のカタマリの単位で、リズムを表す丸として本書に記載されています。その音のカタマリの感覚が英語と日本語では異なるので「この●はなんだろう?数がよくわからない」と思うようなことがあれば「英語 音節」などで調べてみると、本書の記載がよりわかりやすくなると思います。

読みながら感じたこと、今後どう活かすか

私は今年に入ってから、英語の勉強はインプット、特にリスニングをできるだけ多くするようにしています。学習教材も使っていますが、それ以外にオーディオブックやYouTubeをたくさん聞いています。たくさん英語を聞いていたおかげで、この本を読み進める中で「言われてみればそうだな」「たしかに!」と感じるところがかなり多かったです。意識したことがなかったと感じる新しい内容も多くありました。「習ってから慣れろ」は本当に大事だと思いますが、すでに慣れている人は、その経験と知識を組み合わせることでより深みが出たりするんじゃないかなと思っています。

リスニング中心の勉強は、しばらく続けていくつもりです。なぜそのイントネーションやアクセントで読まれているのかを意識すると、身につきやすくなりそうです。英語のハノンなどを使ってリピートやリプロダクションの練習もしているので、お手本の音がどうなっているかを意識し、自分でもイントネーションやアクセントを意識して練習していきたいです。

英文法と同じで、ルールを一通り読んだだけでは、そんなに身につくものではありません。全て理解して頭に残して、それらを意識して話す、ということができるわけはありません。なので、まずは英語に触れながら頭に残っている英音法を意識して、少しずつ自然にできるように練習していきます。自然にできるようになったら、もう一度本を読んで、次に意識したいところに気づいて、またしばらく実際に使いながら練習します。できるようになったら、まだできていないところがないか、本を読み直して探す。それを繰り返すなかで、幅を広げていけたらいいなと思っています。逆に、イントネーションが気になった時に本で調べるという使い方もするかもしれません。簡単に言うと、実践と参照を繰り返して少しずつ身につけていけたらと思っています。

最後に

私は、正しい知識が知れる書籍がとても好きです。好きな分野の本を読むときは、参考文献で学術論文などが大量に引かれているものを選ぶタイプです。誰かを信じるとか、信じないとかではなく、今何がわかっているのか、何がわかっていないのか、そこからどのような解釈ができるのか、その妥当性はどの程度なのか、のようなことを考えるのが大事だと思っています。

ただし、そういうものになると、専門書になって難しくなりがちです。わかりやすくしようとすると、著者の好みで主張がゆがんだり、言いたいことを支えるために、引用の仕方がおかしくなったりすることがあります。難しいまま正しく書くなら、専門書があります。読者の気持ちを動かすために、強い言葉や偏ったことを言って、正しくなくても信じさせる本もあります。

この本は正しい情報の質を保ったまま、わかりやすくなる工夫も凝らして、一般向けだからそこまで細かくは書けないところは、さらに知りたい人にどの本へ向かえばいいかまで伝えてくれる。そのようなバランスが取れていて情報の質も保たれている本は、本当になかなかないと思っています。

英語学習者として役立つ良い本だというだけではなく、正しさと、伝え方と、わかりやすさのバランスが取れた、本として美しいなと思っています。

だいぶ胡散臭く聞こえそうで嫌なのですが、英語の一般書でこんな本に出会えると思っていなかったので、読みながら少し潤んでしまいました。

原稿の大枠ができるまでに1年半ほどかかり、そこから推敲を重ね、完成までは4年半ほどかかったそうです。様々な書籍にあたったり、情報の質を保ちながらわかりやすく伝える工夫をしたり、視覚的に見やすい構成にしたり、補足を加えたりといったことを重ねてきたのだろうと想像できる本でした。長い時間をかけて真剣にこだわって作ったんだろうなと感じました。出版してくれて、本当にありがたいです。